見本誌を頂きました。ありがとうございます!
- 作者: 栗林健太郎,柴田博志,はまちや2,常松伸哉,黒田良,川添貴生,安宅啓,松下雅和,桑野章弘,Jxck,伊藤直也,佐藤鉄平,登尾徳誠,中川勝樹,奥野幹也,近藤宇智朗,堀江幸紀,後藤秀宣,渡邊恵太,中島聡,A-Listers,WEB+DB PRESS編集部
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2013/06/22
- メディア: 大型本
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今回の特集は「継続的Webサービス改善ガイド」「MongoDB実践入門」「[速習]SPDY & HTTP/2.0」の三本です。また、連載記事で「Chef と Vagrant によるインフラのコード化」や「TypeScript入門」が掲載されています。
以下、簡単ではありますが紹介します。
継続的Webサービス改善ガイド
設立十周年を迎えたペパボが、どのようにサービスを改善してきたのかについて、改善の必要性から、開発環境、パフォーマンス、インフラ構成管理、ビジネス視点、それぞれの角度から紹介しています。
経営やビジネスの視点まで含められている点が特徴的ですが、対象範囲がとても広いため、それぞれの内容は比較的あっさり目の印象です。
個人的に、第一章の「次の十年のための改善」という言葉が響きました。IT 業界は歴史が浅く進化がとても速い業界です。歴史はくり返されるものなので、これまでの十年をしっかり咀嚼してから次の十年に取り組んでいきたいと思いました。
MongoDB実践入門
JSON をデータ形式とするドキュメント指向データベース MongoDB の紹介記事です。MongoDB の紹介から環境構築手順、開発・運用ノウハウから事例紹介、今後の展望まで盛り沢山の内容です。
NoSQL が一度バズワード化したためにキワモノ扱いしている方も少なくないと思いますが、そんな疑いの目をすっかり晴らしてくれる内容だと思います。特に RDBMS では手間が掛かり問題となり易いレプリケーションやシャーディングをとても簡単に行える点が魅力的でした。
Ajax の再発明とモバイル端末の普及により、JSON を取り扱う機会は爆発的に増えました。今後この傾向はより顕著になり、Web アプリケーションはモバイル端末と JSON をやり取りする API サーバとなり、バックエンドには JSON をそのまま保持できる MongoDB などが採用されていくと予測されるため、本特集は必読だと思います。
NoSQL については、以下の書籍もお勧めです。
- 作者: Eric Redmond,Jim R. Wilson,角征典
- 出版社/メーカー: オーム社
- 発売日: 2013/02/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 3人 クリック: 56回
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[速習]SPDY & HTTP/2.0
Web をより速くするために Google が仕掛ける次世代プロトコルである SPDY (スピーディー) と、これをベースにした HTTP/2.0 の紹介です。次世代プロトコルが必要である背景、SPDY の特徴と仕様、導入方法から、WebSocket との違い、HTTP/2.0 への影響など、こちらも盛り沢山の内容でした。
圧巻の情報量で、Web に関わるエンジニアは下記書籍と併せて必読の特集だと思います。
Webを支える技術 -HTTP、URI、HTML、そしてREST (WEB+DB PRESS plus)
- 作者: 山本陽平
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2010/04/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 143人 クリック: 4,320回
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Google は HTTP を置き換える SPDY の他にも UDP を置き換える QUIC という新プロトコル も提唱しています。
HTTP と、その下層に位置する TCP や UDP は、回線品質が現在とは比べ物にならないほど貧弱な時代に策定されたプロトコルであり、現在では冗長になってしまった部分が多くあります。Google の提唱するプロトコルがそのまま標準になるかどうかは微妙ですが、これらのプロトコルが徐々に刷新されていくのは間違いなく、状況を注視する必要があると思います。
Chef と Vagrant によるインフラのコード化
近頃よく目にするようになった Chef と Vegrant の紹介記事です。
インフラの構築と運用はアプリケーション開発に比べると職人による手作業の多い分野で、テストもドキュメントもない bash スクリプトが横行しているのが実情ですが、Ruby on Rails の Migration 辺りからインフラ構築作業内容のコード化とバージョン管理という考え方が出てきたように思います。今後数年でインフラ TDD のような手法が確立されていくのではないでしょうか。
Chef を使うことでインフラ構築作業をコード化することができますし、Vagrant を使うとこの作業を何度もトライ & エラーで試していくことができます。次回の連載では、インフラ構築作業結果のテストをコード化する serverspec の紹介とのことで、こちらも楽しみです。
TypeScript入門
(個人的には少し意外なことに)microsoft が仕掛ける altJS の代表格である TypeScript の入門記事です。
Ajax の再発見と jQuery の爆発的な普及により JavaScript によるプログラムの複雑さは増大の一歩を辿っており、JavaScript の柔軟過ぎる言語仕様による問題点も浮き彫りになってきました。
altJS でもっとも有名なものは Ruby on Rails でも標準採用された CoffeeScript ですが、CoffeeScript は単なるシンタックスシュガーに近く、JavaScript の動的型付けや依存性解決と言った問題点は解決されておらず、TypeScript や(またもや Google が仕掛ける)Dart に期待が寄せられています。
今後、HTML5 によるモバイルアプリケーションが主流になると思われ、複雑な JavaScript プログラムのコントロールは待ったなしの課題です。altJS や Angular.js, Backbone.js などの JavaScript MV* フレームワーク、PhantomJS, Jasmine などのテスティングフレームワークの動向を抑えておく必要があると思います。
まとめ
以上の通り、今後数年で重要になると考えられる技術の一端をまとめて把握できる一冊でした。
発売日は先々週 6 月 22 日の土曜日です(書評が遅くなり申し訳ありません)。まだ Amazon に在庫 がありますし、都内の大きめの書店であれば手に入ると思います。
いつも貰ってばかりで申し訳ないので、そろそろまた何か書かせて頂くためにもいろいろとチャレンジしていこうと思います。